ハトラス物語 ① [2020年10月15日]
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米国東海岸のほぼ中央あたりにハトラス岬 Cape Hatteras がある。この沖は北からの寒流とガルフストリーム(メキシコ湾流・暖流)がぶつかり合う格好の漁場になっている。このハトラス岬を超えて大西洋の大海原でトローリングをしたいと誰でもが思っていた。その夢を実現した男 Willis Slane がこの物語の主人公だ、そしてそれはFRP製大型クルーザーの始まりでもあった。
ハトラス岬 Cape Hatteras
北米大陸の東海岸は普通の海岸線が続いているように見えるが、詳細に見ると細長い陸地(アウターバンク・洲)がフロリダ半島の南端、マイアミ付近からニューヨークの南まで続いている。この内側は内水面の水路(Intracoastal Waterway 幅100mから広いところでは30㎞) で、ニューヨークの川やロングアイランズサウンド(ロングアイランドの内側水面)を通って、ニューポートさらに最北端のメイン州まで、フロリダから約3000㎞を内水面を通ってクルーズできる。
有名なマイアミは正確には大陸側のマイアミ市とアウターバンク上のマイアミビーチ市を合わせた総称である。現在は避寒地、マリンレジャーのフィールドとして栄えているフロリダ半島は、200年前は何もない湿地だらけの土地で、1819年第5代モンロー大統領の時当時支配していたスペインから500万ドルで購入した。その以前にもジェファーソン大統領(第3代1801~1809)はナポレオンからルイジアナ(当時はミシシッピー河の西側全域の広さであった)を1500万ドルで、又後年になってアラスカをロシアから720万ドルで購入している。

マイアミ
さて、この長いアウターバンクの所々には切れ目があって大西洋への出入口になっている。ノースカロライナ州東岸に大きくせり出した岬がありこれがハトラス岬で、その南側にハトラス海峡(Hatteras Inlet)がある。ここは名物の北東風が吹くと内水面から出る潮とぶつかって三角波が立つ難所である。
ノースカロライナ州 東岸 ハトラス岬、海峡 右赤丸
ハトラス岬灯台 1870年建造 高さ59m
Willis Slaneは1959年5月のある土曜日、「Hatteras Marine Club」のクラブハウスで風の音を聞きながら考えた「この風ではクラブの木造艇では出航できない、ハトラス岬を安全に超えられるボートが出来ないものであろうか」
Slaneの住む街High Point市はノースカロライナ州の西部で、その土地はアパラチア山脈の山すそに連なっていてそこでは良質の木材が採れた。この地域は昔から家具作りが盛んで熟練の家具職人が集まっている。
そうだここでハトラス岬を安全に越えることのできるボートを造ろう、家具職人を集めればきっといい仕事をしてくれるだろう、ボートの長さは40フィートは欲しい、4~6人が休むアコモデーションも欲しい、キャビン内は家族がクルージングを楽しめるよう少しデラックスにしよう、夢はますます膨らんでいった。 (つづく)
ノースカロライナ州 西部 High Point市 赤丸