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日本のボート事情 ⑥ これからどうなる?

日本のボート事情 ⑥ これからどうなる? [2021年01月23日]

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バブル崩壊から30年、日本のボート業界にとってはまさに失われた30年と言えよう。この間新モデルボートの開発はあまり行われず、センターコンソールタイプのフィッシングボートが開発されたがフィッシングボートのマーケットが縮小したため大ヒットとはならなかった。

1950年代後半から始まった日本のボーティングは60年代に入りFRP化と共に普及が進んだがバブル崩壊とともに停滞期に入ってしまった。この60年間を通してみるとボーティングは富裕層の遊びで、その状態は60年変わらずに続いている。日本式フィッシングボートの普及、拡大はそれを牽引したひもじい思いを経験した年代の高齢化と共に衰退していった。60年を通してみると日本式フィッシングボートの発展は一時期の出来事、あだ花であったと考えるのが良いようだ。

富裕層の間では、ランナバウト・水上スキーからやがてクルーザーの普及につながり、40フィート。50フィートのコンバーチブルの時代を経て最近は大型キャビンクルーザーの時代になっている。約10年前からはIT関係や新規事業で成功した若手の実業家がボートを購入するようになった。彼らのクルーザーのイメージはキャビンクルーザー・動く別荘で、釣りボートではない。さらにスーパーヨットも日本に入ってくるようになった。

86フィート クルーザー

この富裕層によるボート購入は今後も続くと考えられる。一方、中間層はどうかというとボートを購入するような余裕は無くなってしまった。というよりバブル以降は中間層がいなくなり、富裕層と平民といった2極化が進んだ。今退職金をもらうなどで多少資金を持った人も、日本はこれからどうなるのであろうか、年金は大丈夫だろうかなど将来への不安があって使うことが出来ない。

結局ボート業界としては富裕層相手のビジネスと割り切った方が良いようだ。格差は悪と世間では言われるが、我々は格差で生きてゆくことになる。

 

技術的な今後の転回はクリーンエネルギーへの転換である。2035年にはガソリンエンジンの新車販売を終了させようという計画である。これからの十年自動車業界は大きな変化が起こるであろう。このことは当然マリン業界にも及ぶので、船外機の電動化などの開発が急務である。日本の各社は既にひそかに研究、開発していることと思う。

 Estala 設計・日本 艇体・台湾、モーター・ドイツ製

ボートについても電動船が当然増えてくる。まだ国産の電動船は開発されていないので当分は輸入艇の時代になろう。検査体制の早急なる整備などが望まれるところである。日本のボート市場は既に40フィート以下のFRP艇を除いて輸入艇の時代になっている。セーリングクルーザーもほぼ100%輸入艇である。今後ますます輸入艇のシェア、重要性が高まるであろう。

 インフレータブルボートも80%以上輸入品

 

と言ってもボートマーケットが拡大するわけではない。政府が日本の将来めざす方向を決めて、それに向けて努力、支援を行う、ということが明確にならないと国民の将来に向けての不安は解消されない。私見であるが、日本は「技術大国」を目指す、物を作るのは中国でもベトナムでもタイでもインドでもよいが、その物を作るための機械を作る技術は日本の工作機械、産業用ロボット、それらのシステムを使わねばならない。すなわち日本は生産する為のもとになる技術のトップの地位を少なくとも10年後には確保する。それが達成できれば大きな外交力、さらに防衛力になる。これができるのには河野太郎首相を待たねばならないだろうが(多分5年後)、こういった明確な将来像を打ち立て推進してゆけば5~10年の間に国民の不安が解消されボートマーケットも拡大してゆくであろう。

 

結論として、今後の10年ボートマーケットがどのようになるか全くわからないが、富裕層相手の商売が続くこと、輸入艇がますます重要になってゆくことは間違いないであろう。


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