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台湾マリーナ事情

台湾マリーナ事情 [2021年07月14日]

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台湾にはマリーナが無かったが、約10年前ごろから漁港や港湾の空きスペースを利用したマリーナが作られるようになった。

台湾は北回帰線(北緯23.5度)上にある常夏の島である。しかし、ハワイのようなリゾート地、マリンスポーツの楽園にはなっていない。これにはいくつかの理由があるが、1番は地形上の問題、第2は戒厳令である。

  台湾略図

 

まず台湾の地形を見てみよう、台湾の面積は九州と同じくらいの島である。その中央東側に大山脈がある、これは3000m級の山脈で、一番高い山・玉山(昔の新高山)は3,952mあり富士山より高い。立体的に見ると丁度鰹節のような形である。東海岸はこの3000m級の山がそのまま海に落ち込んでいて、東海岸のほとんどは急峻な崖で、入江や砂浜がほとんどない。砂浜は北東部の宜蘭と南東部の台東にあるだけで、中央部の海岸は浜に見えてもごろた石や砂利浜になっている。自然の入り江も蘇澳港のみである。

西海岸は山がなだらかに下がってきて平地も多い、人口の8割はこちら側に住んでいる。では海はどうかというと、西海岸の大半、新竹から台南、は遠浅の浜になっている。これは大雨の時に高地から流れてきた泥が海岸に堆積して出来た泥砂の浜で、干潮になると有明海のように100m以上干上がってしまう。水も汚く海水浴やマリンスポーツには適していない。

台湾には自然の良港が非常に少なく、基隆、安平(台南)、高雄そして蘇澳(東海岸)だけであとは北部と台南より南に多少の入り江があるのみである。自然の漁港も少ない。

 

1945年、日本の敗戦により台湾は中華民国に復帰した。そして1949年から戒厳令が敷かれた、海岸線は封鎖され、兵隊さんが銃をもって哨戒していた、漁師さんも特別の鑑札が無いと漁に出られない状況で、マリンレジャーなどとてもできる時代ではなかった。

李登輝総統の時代になって、1987年にようやく戒厳令は解除された。そしてまず東海岸が解放され、数年遅れて西海岸も国民が自由には入れるようになった。東海岸が解放されてすぐ基隆のさらに東の龍洞の入り江に護岸を作って初のマリーナ、遊艇専用港、が作られた。かなり高い岸壁で囲んだ港であるが、台風の高波を止めることが出来ず、残念ながら不評であった。

 遊艇港の看板

龍洞マリーナ 高い護岸でも台風の高波を防ぎきれなかった

 

その後2010年頃から各地の漁港や港湾の空きスペースが解放されレジャーボートの係留場所となった(日本のボートパークに類似)。そのいくつかを2014年に見学したので、北から順に紹介しよう。

八斗子(パトス)漁港 基隆よりさらに東にある漁港、かなり広いスペースにポンツーンが入れられ、200隻以上のレジャー艇が係留されている。まだ余裕があるのでさらに拡大されているであろう。

パトス漁港

 

淡水フィッシャリーナ 台北に近い淡水にできたフィッシャリーナ 多くのレジャー艇、フィッシングボートが係留されている、台北に近くべ便利なのですでに満杯状態であった。

淡水フィッシャリーナ

 

竹囲(ゾーイ)漁港 桃園にある竹囲漁港もレジャーボートに開放されている。ここも200隻以上あると見えるが、満杯である。台湾の北海岸は良い潮が入っているようで好漁場が多い、さらに東海岸の沖には黒潮が流れているので大物も狙える。このほか新竹、宜蘭(東海岸)にもボートパークがあるというが見ることはできなかった。

竹囲漁港(桃園)

 

 

それでは南の方のマリーナを見てみよう。

布袋遊艇港 嘉儀市の西に布袋港(プータイ港)がある、そこに立派なマリーナ施設ができた。ポンツーンの係留施設だけでなく、陸上にシャワールーム、ロッカールーム、ミーティングルームなどを備えたクラブハウスも立てられている。この時見た保管艇は20隻以下と少ないが、セーリングクルーザーや大型キャビンクルーザーも係留されていた。

 布袋遊艇港 立派な看板がある

ポンツーンの向こうにクラブハウスもある

 

安平港 台南の港安平港にもプレジャーボートの保管施設ができている。港の一部を遊艇を係留できるポンツーンが設置された。ここはセーリングクルーザーが多い、高雄からも高速で1時間と便利なので、高雄在住のオーナーの利用も多い、この時、2014年、はまだ少なかったが現在は50隻以上のヨットハーバーになっているとのことである。

安平港ヨットハーバー

 

高雄港哨船街 高雄の港の中の北東に哨船街という小さい入れ込みがあって、そこに哨船頭遊艇嗎頭Shaochuantou Yacht Pier がある、ポンツーンに20隻程度止められる、対岸にも第2ポンツーンがあり合わせて50隻がひしめいている。高雄市内のボート置き場はここしかないので満席である。

高雄港内 哨船頭遊艇嗎頭

 

大鵬湾 高雄の南約25㎞の東港地区に大鵬湾という海につながった湖がある。平水で静かなそしてきれいな水面で、ボートの係留だけでなく、ディンギーセーリング、セーリングボード、ジェット、SUPなどマリンスポーツに最適なゲレンデとして利用されている。台湾南部はあまり良い魚が釣れないためかフィッシングボートは少ない。ジェットなどのマリンスポーツの方が盛んなようである。

 大鵬湾ボートパーク

 大鵬湾案内図

 

2014年にすでにこれだけの遊艇港・ボートパークが出来ており、その年に始まった台湾ボートショーに台北からも多くの来場者があり、ボートパークもさらに増えて、ボート市場も拡大すると期待していたが、残念ながらその後ほぼ停滞している。一人当たり国民所得は2万ドルを超えており十分なレベルであるが、その後政権が交代し、中国との関係が厳しくなった。また最近では香港や新型コロナの問題もあり、中国との経済関係も見直しが行われようとしている。そういうわけで政治的、経済的不安がある、これらがある程度解消するまでボート市場がブレイクすることは見込めないであろう。

 常夏の島 台湾が ボーティングやマリンスポーツのメッカになるにはもう少し待たねばならない。

 

 


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